朝ドラ「マッサン」第八週「絵に描いた餅」木曜日あらすじ

                                                    <p>蔵では、酒作りの櫂(かい)入れの工程が行われている。(※第一週で、政志と政春が相撲を取って、本音を打ち明けた部屋)</p><p>大きな樽にもとすりを終えた、酒母を入れ、もろみ(桶に移した酒母はその後「もろみ」と呼ばれる)櫂で、日に数回、温度を安定させる為に、攪拌(かくはん)する作業。</p><p>&nbsp;</p><p>政春が「よいしょ!」と、中身をかき混ぜる。俊夫が「溶けとらんでしょうが!」と、厳しく指導。政春は「ああ~、もう、あかん!あかん、あかん、あかん!」と、櫂から手を離し、一休み。手ぬぐいで汗をぬぐい、「あ~…。」とへたれている。俊夫は「旦那様のとんだ見込み違いじゃのう。」と、呆れる。「何の事じゃ?」と、政春。俊夫は、軽蔑した目つきで「察しの悪い、お坊っちゃまじゃ。」と、言って、隣の樽の櫂をつかんでかき混ぜる。政春は「あ~。」と、腰に来る重労働にへこたれ、桶から離れた。</p><p>&nbsp;</p><p><font color="#0000ff">(回想シーン)</font></p><p><font color="#0000ff">大阪へ戻る前の日<strong>、「日本で初めての男になるんじゃろうが!世界一、うまいウイスキー造って、新しい時代を作ってみい!」</strong>と、政志と真剣に相撲を取り、「ああ~っ!」と取っ組み合ったのは、この場所。</font></p><p><font color="#0000ff"></font>&nbsp;</p><p><font color="#000000">うつろな目をした政春は、再び櫂を手にし、腰に力を入れて、かき混ぜ始めた。</font></p><p>&nbsp;</p><p><font color="#ff00ff">ナレーション:ウイスキー造りが出来ない中、広島の実家に呼び戻され、日本酒造りを手伝う事になったマッサン。一方</font><font color="#ff00ff">、嫁として認めてもらう為、女中仕事にいそしむエリー。</font></p><p>&nbsp;</p><p>雑巾掛けで固く雑巾を絞るエリー。指に出来たあかぎれが痛々しい。廊下を拭き掃除するエリーの姿を反対側からじーっと見つめる早苗。</p><p>&nbsp;</p><p><font color="#ff00ff">ナレーション:2人は一体、どこへ向かっているのでしょう。</font></p><p><span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000"></font></span>&nbsp;</p><p><span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000">千加子は間もなく生まれてくる子供のためにおしめを縫っている。</font></span></p><p><span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000"></font></span>&nbsp;</p><p><span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000">櫂入れを終え、作業小屋へ休憩に来た政春達。</font></span><span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000">政春は、「あかん…、もう限界じゃ。」と、へろへろ。俊夫が「あかんとか、限界じゃとか、お坊ちゃまは気楽でええですのう!」と、つっかかる。政春は「その<お坊ちゃま>は、やめてくれんかのう?何かこう…、くすばいぃなるわ。(=くすぐったくなる)。」と、迷惑そうに言った。手ぬぐいを取りに行った俊夫が、政春の顔を見て「好きで言うとるんじゃなぁです。」と、言う。「</font><font color="#000000">ん?」と、政春。俊夫は「わしら蔵人が、お坊ちゃまとお呼びするんは、お坊ちゃまが、この家のお坊ちゃまじゃから、でさのう。」と、言った。離れた場所に座る他の蔵人2人もうんうんとうなずいている。俊夫は、屋内にある、井戸の桶にひしゃくをつっこむ。政春は休憩室の上がり口に腰掛け<strong>、「それほどの家かのう!」</strong>と、やけっぱちに、ほえる政春。俊夫は「当たり前じゃ。旦那様と奥様は、わしにとっての親代わり。わしは、この蔵の酒に心底ほれ</font><font color="#000000">込んどりますけん。」と、言って、ひしゃくにすくった水を飲んだ。俊夫はひしゃくを置き、はちまきを取って、懐に入れ、水桶に手をかける。政春が、立ち上がり、「俊兄…、ウイスキー飲んだ事あるか?」と、尋ねた。俊夫は「ある訳なぁでしょうが。西洋どころか、わしゃ、この町からも、一歩も出た事、ありゃせんのじゃけん。」と、言って、水桶の水を平たい桶に移す。平たい桶に入れた手ぬぐいを湿らせ、絞る。政春は「ウイスキーはうまいど! ありゃ未来の酒じゃ。」と、話す。俊夫が「ハハハッ…。」と、笑い、「ハハハハッ…。」と、政春もつられて笑ったのだが、俊夫は<strong>、「<絵に描いた餅」></strong></font></span><span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000"><strong>ですのう!」</strong></font><font color="#000000">と、厳しい顔で政春に言った。政春の顔から笑みが消えた。「何じゃと。」俊夫は、「そがな西洋の酒、日本で造れる訳がない。造ったところで、誰が飲むんです?」と、言って眼鏡を外し、手ぬぐいで顔を拭いた。政春は、「みんなが飲むようになる。いつかこの国にも、ウイスキーの時代が来るんじゃって!」と、力説。俊夫は手ぬぐいを平たい桶に投げつけ、水滴が政春に降りかかる。<br></font><font color="#000000">俊夫は<strong><font size="3">「甘ったれるのも、ええ加減にして、つかぁさい!」</font></strong></font></span><span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000"><span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000">と、怒鳴りつける。蔵人達も2人のやりとりに、注目。政春は、俊夫の怒りっぷりに、驚いて目を丸くする。俊夫は、</font></span></font></span><font size="3"><span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000"><strong>「現実をよう見てみね(=見てみなさい)。ええ年して、仕事もしとらん。いまだに、親のすねかじっとるお坊ちゃまが、何で、そがな西洋の酒、未来の酒、造れる</strong></font><font color="#000000"><strong>んです?」</strong></font></span></font>政春には、返す言葉がなかった。<br></p><p>エリーは、先日政春達が樽を引き上げていた階段の拭き掃除をしていた。一段一段丁寧に拭いていたエリーだったが、数段下の階段に置いていたバケツに、不注意で足が触れ、ガラガラと音を立て、バケツが転がり落ちてしまった。「<span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000">あっ…。」慌てて、バケツを拾いに階段を下りるエリーが足を止めた。転がったバケツのそばに早苗の姿が。カツカツと下駄を鳴らし、早苗がエリーの前へ。エリーは数段階段を下り、すとんと階段に座り込む。立っている早苗と顔の位置の釣り合いが揃った。早苗は「どういう、じゃろね? あんたのお母さんが、この姿を見たら…。遠い島国に来て、仕事の、のうなった旦那の実家で、女中させられて…。もう、うちじゃったら、涙が出るわ。首に、縄つけて、連れて帰る。</font><font color="#000000">あんた…、お母さんとこ、帰ったらどうね?」と、真剣な顔でエリーを説得しようとする早苗。エリーの目に涙がにじんでくるが、「帰りません。」と、きっぱり、拒否。早苗の顔が実の娘に拒否されたかのような、悲しげな顔になる。「マッサンの夢、信じます!」と、言うエリー。「頑固もんじゃね、2人とも。」と、ため息混じりに言う早苗。「親の顔が、見てみたい。」と、捨てぜりふをエリーにぶつけ、つんとすまし顔をしてスタスタと戻っていった。エリーは首を横に振り、肩をすくめ「はあ…。」と、息を吐いて、気持ちを整えようとした。</font></span><br><br>母屋の玄関を開け、戻ってきた政春。奥から自分の方へ母親が向かってくる。しかし、早苗はじろっと政春の顔を見ただけで、何も言わず、履き物を脱ぎ、家の中へ。政春は、手ぬぐいで、汗をぬぐいながら、母の背中を見つめた。すると、今度はエリーがバケツを持って戻ってきた。「<span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000">お母ちゃんに、また何か、言われたんか?」と、心配する政春。エリーは、何も答えず政春の前を通り過ぎ、玄関脇の道具置き場の納戸にバケツを置きながら、政春に背を向けたまま、エリーは「大丈夫。」と、答えた。政春が「すまんのう。」と、謝ると、エリーは、ふーっと息を吐き、振り返ると、笑顔で「大丈夫。」と、答え、ねっと言う顔つきで微笑んだ。</font></span></p><p><span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000">政春は、板の間に「ああっ、あ~…。」と、両手を後ろに付いて、腰を下ろし、「<絵に描いた餅>じゃと…。」と、うつむき、俊夫に言われたことをぼやいた。炊事作業の合間に、上がり口に腰掛け、家事で、疲れのたまる腰に手を当てながら、エリーは「モチ…?」と、繰り返した。政春は「どがぁに、上手に書いた餅の絵も、見るだけで、食う事はできん。実現できん、夢、いう意味じゃ。」と、教える。「確かに…、そのとおりかもしれんのう。」と、うつむき話す政春。エリーが「そのとおり?」と、政春を見つめて尋ねた。</font><font color="#000000">政春は、顔を中庭の方に向け、「金もなぁ、仕事もなぁ、今のわしに、ウイスキーなんか、造れんのかのう…。俊兄の言うように…、わしゃ計画書を書いただけで、一歩も前に進んどらん。ほんまに<絵に描いたウイスキー>じゃ。ハハッ…。」と、エリーに顔を向け、苦笑い。エリーが真剣な顔で、「マッサン! 駄目! 」と、言う。「ん?」エリーは「 マッサン、いつか、ウイスキー造る。ねっ。私たちの夢、きっと叶う。きっと!今は、ちょっと、お昼寝してるだけ。ねっ。」と、政春を励ます。</font><font color="#000000">政春が「エリー…。」と、つぶやき、エリーの顔を見る。エリーは、「ねっ。」と、政春の手に触れ、励まし、微笑んだ後、「おっ、マッサン。」と、慌てて台所に駆け寄り、「この、おみそ汁…。」と、言って、鍋の蓋を取り、お椀に味噌汁をそそぐ。政春が「みそ汁?」と、立ち上がって、上がり口に立つ。エリーは「飲んで。」と、政春に味見をしてもらう。味噌汁をすすり、「おお…、うまい、うまい。亀山の味じゃ。」と、感想を述べる政春。エリーは両手を頬に当て、「本当?」と大喜び。政春が「ああ…。」と、言うと、政春の頬にも手を伸ばし、「あ~! 」と大喜び。味噌汁をすする政春に、「お姉さんが、教えてくれた。」と、打ち明けた。政春が「姉ちゃんが?」と、驚いた。エリーは「うん!」と、拳をにぎり、大喜び。「ほんまか?」「</font><font color="#000000">うん。お姉さんの所に行ってくるね。」と、エリーは家の中へ。「うん。」と、振り返り、エリーを見送る政春。頑張るエリーの姿に、励まされ、微笑む政春。</font></span></p><p><span style="color: rgb(148, 113, 222);"></span>&nbsp;</p><p><span style="color: rgb(148, 113, 222);"></span><span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000">エリーは<strong>「お姉さ~ん、お味噌汁出来ました! 」</strong>と、大きな声で、言いながら、床の間のある、千加子が裁縫していた部屋へ駆けつけたが、千加子の姿がない。「お姉さん?」と、隣の仏間をのぞくと、「うっ…、あっ…。」と、千加子がお腹を押さえ、荒い息をして、陣痛の痛みに苦しんでいた。</font></span></p><p><span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000"></font></span>&nbsp;</p><p><span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000">政春は蔵の仕事に戻ろうと、履き物を履いて歩き出した、その時!</font></span></p><font color="#000000"><p><strong>「マッサン!マッサン、助けて!」</strong>と、エリーの声。政春は、目を見開き、慌てて家の中へ。</p></font><p></p><p><font color="#000000">「お姉さん、しっかりね。しっかり! そうそう…。」と、エリーが、千加子の体をさすり、政春が<strong>「エリー! どうしたんじゃ?」</strong>と、騒ぎながら、仏間の障子を開け、苦しむ姉の姿を見て、「生まれるんか?」と、エリーに聞いた。エリーは「多分…。」と、答えた。騒ぎを聞きつけ、すみれ達も床の間の部屋にやって来た。ちょっとしか開いていなかった襖を押し開け、「どうしたん? 」苦しむ姉の姿を見て<strong>「お姉ちゃん!」</strong>と、驚き、島爺も<strong>「千加子お嬢さん!」</strong>と、オロオロ。早苗が仏間に姿を見せるやいなや、政春に<strong>、「お産婆さん、呼んできて。」</strong>と、命じた。政春は「どこの産婆じゃ?」と、島爺に聞いた。</font><font color="#000000">島爺は、あたふたしつつ、「隣村の、トキさんでがんす。」と、伝えた。政春は「おい、島爺!」と、声をかけ、島爺も「はい、はい。」と、答え、2人は部屋を飛び出して行った。早苗もちょっと慌て気味で、「すみれ、あの…、きれと、布団持ってき!」と、命じた。すみれは、ああ・・ああ・・と、急な事態にオロオロしている。エリーが立ち上がり、「私が行きますね。」と、すみれの手を取り、率先して、動いた。早苗は「千加子…。」と、心配そうに娘に寄り添った。<br></font><br>島爺に産婆の家を教えてもらい、出かける支度中の政春。<br><font color="#000000"><span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000">島爺が、上がり口で「坊ちゃん、お気を付けて!」と、声をかけた。政春は「おお、任しとけ。」と、前掛けを外し、島爺に預け、駆け出そうとしたその時<strong>、「お坊ちゃま、仕事さぼって、何しとりんさるんですか?」</strong>と、俊夫が入って来て、手を広げ、阻止しようとする。政春は、慌てて<strong>「う…生まれるんじゃ!」</strong></font><font color="#000000">と、答え、俊夫を振り払って、駆け出そうとする。俊夫は<strong>「えっ!? 酛摺り(もとすり)で、がんすのう!」</strong>と、政春の手を引っ張り、引き戻した。島爺があたふたと、している。政春は<strong><font size="3">「わしゃ、産婆んとこ、行くんじゃ!」</font></strong>と、政春は、俊夫を振り切って、駆け出していった。俊夫は<strong>「…産婆!?」</strong></font></span></font>と、大口を開け、島爺に顔を向けた。<br><br>床の間のある部屋にエリーや女中達、すみれが布団を運び込む。<br><span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000">エリーが「持ってきました。」と、隣の部屋に声をかけた。早苗が「すみれ。」と、声をかけた。「はい。」と返事するすみれ。エリーは仏間へ駆けつける。早苗は、千加子を支えながら、「布団積んで。千加子を…。布団載っけて。」と、指示をする。エリーが「千加子。」と、声をかけ、さすろうとすると、</font><font color="#000000">早苗は<strong>「触らんでいい!」</strong>と、怒鳴った。エリーは、早苗に「お母さん、私のパパ、お医者さんでした。赤ちゃん生まれる時、手伝った事もあります。ねっ。」と、手伝いを願い出た。千加子は「う~っ…。」と、苦痛に顔をゆがめている。早苗が「大丈夫か?」と、声をかけた。</font></span><br><font color="#000000"><br></font>島爺と俊夫は、千加子が産気づいている事を、床についている政志に報告していた。<br><font color="#000000"><span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000">政志は上半身を起こし、「まあまあ、心配せんでも、ええて。早苗がついとるけぇ。」千加子の出産も3回目、政志は、さほど案じてはいない様子。<br>島爺は「いや、じゃけど、蔵の者ら、うろたえとります。」と、訴える。俊夫は「旦那様から、一言もらえりゃ、みんなも安心できます。」と、告げた。島爺が、大きくうなずいた。</font><font color="#000000">政志は「ほうか? よっしゃ!」と、元気よく、布団の上に立ち上がった。俊夫と島爺が大きく口を開け、立ち上がった政志の姿を見上げ、驚く。「</font></span></font><font color="#000000"><span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000">旦那様!?」</font><font color="#000000">政志は、ぎっくり腰が長引いている振りをしていたことを思いだし、「あっ、イタタタ…。」と、腰に手を当て、痛がる振りをした。</font></span><br><br></font>寝間着に着替え、重ねた布団に横向きに寄りかかり、陣痛の痛みに耐えている千加子。<br><span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000">「う~っ、う~っ…。」早苗が<strong>「しっかりしい、千加子!」</strong>と、声をかけ、さするが、千加子は<strong>「う~っ…。そがな事言われても、痛いもんは、痛い…! う~ううっ…。」</strong>と、逆ギレ。エリーが「お姉さん、これ。抱いて!」と、座布団を二つ折りにして、渡す。早苗が「ん?」と、眉をしかめる。千加子は言われた通りに座布団を抱きしめた。「抱いて…。ギュ~ッと! ギュ~ッと。そうそう…。」千加子は「はあ、はあ…、ああっ…。</font><font color="#000000">もういけん。もういけん…。」と、苦しそうな息。</font></span></p><p><span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000">すみれが「もう…、生まれるんじゃないじゃろか。」と、オロオロ。エリーは「すみれ、お湯、沸かして。たくさん、たくさん。」と、指示を出した。すみれは何度もうなずき、お湯を沸かしに台所へ急ぐ。早苗は「政春、何しとるんじゃ。」と、なかなか産婆を連れ戻らない政春にイライラ。</font></span><br>痛みで息が上手く出来ず、苦しんでいる千加子。その時、<font color="#0000ff"><span style="color: rgb(239, 130, 239);"><font color="#0000ff">♪ああ 安</font><font color="#0000ff">芸のヨーホイ♪ </font></span><br></font><span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000"><font color="#000000">もとすり唄が聞こえてきた。エリーが「お姉さん、お酒のお母</font><font color="#000000">さんの歌が聞こえてますよ。」</font></span><br></font>千加子も耳を澄ました。<br><span style="color: rgb(239, 130, 239);"><font color="#0000ff">♪ヨイヤーナ ヨイヤーナ </font> <font color="#0000ff">廻れば ヤレ七里ヨーホイ ああ浦はヨーホイ♪</font></span></p><p><font color="#000000"><span style="color: rgb(239, 130, 239);"><font color="#000000">蔵人達が真剣な顔で、</font><font color="#000000">もとすりに取りかかっていた。</font></span><br></font><font color="#000000"><span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000">エリーは千加子に手を触れ、「お姉さん、</font><font color="#000000">ゆっくり合わせて。」と、呼吸を蔵から聞こえてくる唄の調子に合わせるようにアドバイス。千加子はエリーの顔を見て、少しやわらいだ顔をして、言われた通り、笑顔で見つめているエリーと一緒にリズムをとり、息を整えた。</font></span><br></font><br><span style="color: rgb(239, 130, 239);"><font color="#0000ff">♪七浦のヨーホイ ヤレ七恵比寿 ♪</font></span></p><p><span style="color: rgb(239, 130, 239);"><font color="#0000ff"></font></span>&nbsp;</p><p><span style="color: rgb(239, 130, 239);"><font color="#0000ff"><font color="#000000">千加子の息が落ち着いてきた。「そう…。」と、声をかけ、千加子とエリーは見つめ合いながら、唄のリズムに合わせ、うなずきながら、息を整えていく。早苗がエリーと千加子をチラチラと見る目が穏やかになっている</font></font></span><span style="color: rgb(239, 130, 239);"><font color="#000000">。</font></span></p><p><span style="color: rgb(239, 130, 239);"></span>&nbsp;</p><p><span style="color: rgb(239, 130, 239);"><font color="#0000ff">♪ヤレサノセー ションガーエー</font> <font color="#0000ff">ああ 目出度ヨーホイ♪</font></span><br><br>産婆をおぶって、口に産婆の草履をくわえ、暗くなった町をひた走る政春。</p><p>亀山家の台所では、すみれや女中達が湯沸かしに大忙し。すみれが手桶を2つ抱え、部屋に行こうとしたところ<strong>、「うあ~」</strong>と声にならない声がして、<strong>トン!</strong>と戸が開き、産婆を背負った政春が帰ってきた。<font color="#000000"><span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000"><strong>「お兄ちゃん!」</strong>手桶を置いて、すみれが駆け寄る。ふがふが、サンダルをくわえ何かしゃべる政春。産婆が政春がくわえていた、草履を取ると、政春は<strong>「すみれ! 間に合うたか?」</strong>と、言って、産婆を板の間におろした。すみれは<strong>「お母ちゃん! 産婆さん来んさったよ!早よ、早よ、早よ!」</strong></font><font color="#000000">と、大声で知らせ、産婆は政春がくわえていた荷物を受け取り、すみれに背を押されながら、2人は千加子のもとへ急いだ、政春は、上がり口に腰を下ろし、「あ~痛い…、あっ…。」と、苦しみながら、横になった。</font></span><br></font><br><span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000">産婆<font color="#008000">(川本美由紀)</font>が「息んで!」早苗が「しっかりせえ。」</font><font color="#000000">エリーが「頑張って!」と、励ます中、千加子は「うう~っ! う~っ、うっ!」と、必死で息んでいる。枕にぱたっと頭をおろし、あえぐ千加子。産婆が「もう一回! 息んで!」と、声をかける。ハラハラと見守る早苗。手伝っているエリー。</font><font color="#000000">千加子が「う~っ…! はあ、はあ…。」と、苦しそうに息をする。</font></span><br><br>政志の部屋。政志は布団の中で、上半身を起こし、話を聞いている。<br><font color="#000000"><span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000">政春は「産婆さんの見立てじゃ、</font><font color="#000000">逆子じゃろう、言うて。」と、出産が長引いている事を知らせた。</font><font color="#000000">政志は「千加子、苦しんどったか?」と、尋ねた。政春が「ああ…。」と、答えると、政志は「お前が生まれた時も、難産でのう。お母ちゃんもだいぶ、苦しんどったわい。こがな時、男は、何もできんのう。」と、いう父に、政春も「</font><font color="#000000">ほじゃの…。」と、微笑む。</font></span><br></font><br>板の間で、向かいの部屋の様子が気になり、そわそわ、落ち着かず行ったり、来たりしているすみれ。千加子の夫、岡崎徹<font color="#008000">(森澤匡晴)、</font>息子の岡崎勝<font color="#008000">(宮崎航平)、</font>娘の岡崎寛子<font color="#008000">(眞鍋歩珠)、</font><font color="#000000">は火鉢にあたりながら、出産の時を今か今かと待ちわびていた。<br></font><strong><font size="3">「オギャア!オギャア!」</font></strong><span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000">元気な産声が響いた。「あっ!」と、すみれと岡崎徹が窓辺に駆け寄った。お湯を沸かしていた女中達も立ち上がった。</font></span></p><p><span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000"></font></span>&nbsp;</p><p><span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000">政春が「生まれた!」と、つぶやいた。政志も笑顔で「ああ!」と、うなずいた。政春が立ち上がり「親父、生まれたど!」と、向かいの部屋を指さす。政志も喜びのあまり、立ち上がり<strong>、「千加子、ようやった!」「万歳!」</strong></font><font color="#000000">と、政春と2人万歳をして大喜び。ハハハハと笑い、立っている父に気付き、政春は「あれ…? 親父、親父!」と呼びかけた。「あ?」と、政春を見る政志。<br>政春が「腰は?」と、尋ねると、</font><font color="#000000">政志は「ハハハッ…!」と、高笑い。政春は、はめられた!と知り、額にぺちんと手を当てて悔しがる。</font></span><br><br><span style="color: rgb(148, 113, 222);"><font color="#000000">産婆が「元</font><font color="#000000">気な男の子でさ。」と、産後の処置を終え、産着にくるまった幼子を、千加子の枕元に連れてきた。早苗が孫の顔をのぞき込む。「</font><font color="#000000">ええ子じゃのう。」産婆は隣の部屋へ。</font><font color="#000000">エリーが「お姉さん、おめでとう。」と、祝福する。千加子は、満面の笑みで「ありがと。」と、ほほえんだ。すみれが「お母ちゃん、入るよ。」と、声をかけた。早苗が「うん。」と、答えるやいなや、障子を開けるなり、「わあ! お姉ちゃん。」と、腰を下ろし、新しい甥っ子の顔に見入るすみれ。岡崎一家も小走りにやってきて、赤ちゃんのそばに腰を下ろす。</font><font color="#000000">岡崎徹が、子供達を自分の前にしゃがませ「お前ら、こけぇ、座れ。」と、うながし、子供達は弟を見つめた。徹は千加子の右側に回り込み、「千加子、ようやったのう!」と声をかけた。千加子が「うん。」と、答えた。エリーはその光景を微笑みを浮かべ、静かに見守っている。</font></span><br><br><span style="color: rgb(127, 127, 0);"><font color="#ff00ff">ナレーション:新しい命の誕生に立ち会え</font>、<font color="#ff00ff">エリーにとっても、忘れられない夜になりました。</font></span><br><br>明日へつづく。</p><p>&nbsp;</p>